職人さんの手によって生まれる獅子頭

 

獅子舞に携わっている者にとって
獅子頭はよく知っているようで知らない物です。

いったいどのようにして出来上がっていっているのか
使用している側としては、普段そのようなことを意識することはあまりありません。

 

作業中[ 松下獅子店 ]

 

個人的な写真活動を通して、
獅子頭の制作を、特別に見させてもらう機会があったのですが
一言でいうと、とてつもなく根気のいる作業です

しかも、そのような細かなところまで気を使って作業をしているんだ
という驚きの連続でした。

道具、材料、全てにおいて気を使っています。

紙で作られている獅子頭といっても、紙だけではやはり弱い物です。
獅子頭の強度を強くする為に、何回も何回もいろんな工程を重ねていき強くしていきます。

金箔の張り合わせでも、気を使いながら作業をしていました。
一つ一つの工程が、すぐできるようなものでもなく
どれも相当な根気がなければ出来上がりません。

誰にでもできるものではないのだなというのが
正直な感想でした。

ただそのような大変な作業でも
ある職人さんは、修理でも新調でも、喜ぶような獅子頭を渡すことができれば
という想いで獅子頭を制作しているそうです。

たった一つの獅子頭には、地域の方々、獅子組、そして制作者
たくさんの想いが詰まっているのかもしれませんよね。

 

 

お祓いと獅子と神様

 

各地で、徐々に秋祭りが催されたと耳にするようになってきました。

来月に入れば、葛原の周辺地域でも鉦や太鼓の音色が聞こえてきますので
その頃には、葛原の秋祭りももうすぐなんだと実感していると思います

葛原の秋祭りでは、祭り1日目の宵祭りから始まります。
葛原4組の獅子組が、葛原正八幡神社の境内で1組ずつ舞っていきます。

ただ、獅子舞をする前に必ずすることがあります。

 

葛原正八幡神社 お祓い
葛原正八幡神社 お祓い

 

お祓いです。

太鼓打ちの頃に、聞かされていたお話しがあります。

お祓いを受けることで神様が宿り、初めて家を回ることができる。
太鼓打ちのあなた達も、神様が宿っているんやで。

と。

 

大木獅子組[ 家遣い ]
大木獅子組[ 家遣い ]

 

小さい頃のお話ですが、不思議とずっと覚えていて
お祓いを受けた獅子頭でないと、家を回ることができない。
というお話しを、上の方々からにもちょくちょく聞いたことがあります。

実際、お祓いを受けたあとお守りを受け取ります。
そのお守りを、獅子頭の頭に付けてから初めて境内で舞うことができます。

この獅子頭にお守りを付けるという風習は、香川県全域で見ると珍しい風習だそうです。

善通寺市の原田町にある春日神社の秋祭りでも、祭り1日目の獅子舞をする前に1組ずつお祓いを受けています。
春日神社では、お守りではなく御幣を付けるそうです。
そして三豊市にも、同じような風習のある地域があるそうです。

民俗学に携わっている水野一典さんのお話では、中讃地域では古風な形で祭りが行われている地域が比較的に多いとおっしゃられてました。
お祓いを受けて初めて獅子舞ができるというのも、その一つだそうです。

天気の悪い年は、太鼓打ちと獅子は濡れないようにとても気を使います。
移動する時も、鳴り物の道具以上に気を使います。

小さい頃は、獅子頭を触っただけでも怒られてました。
油単の付けた獅子を跨いで遊んでいても、とんでもなく怒られた記憶があります。

昔から続く風習が、自然と特別な物という意識へと結びついっていったのかもしれません。
今現役の僕達も、そのような意識を廃れさせないようにしないとと思います。

 

 

幟(のぼり)文化 Part.2

 

以前のブログで、葛原の幟文化について書きましたが
その周辺地域にもあると少しばかりご紹介もしました。

↓以前のブログ記事はこちら
http://sanuki-shishimai.info/blog/2015/06/17/post_195/

秋祭りになると、多度津町、善通寺市で大きな幟を見かけます。
丸亀市や琴平町の一部地域でも見かけます。

神社の沿道に並ぶ幟とは別に、各獅子組で持っている背丈以上の大きな幟。

その使われている生地も、沿道に並んでいる幟とは違ってしっかりとした厚手の生地で作られています。刺しゅうも入ってたりしますので、肩に担げばずっしりした重量を感じることができます(笑)

 

葛原正八幡神社【仲多度郡多度津町葛原】 秋祭り[大木獅子組の幟]

 

本祭りでは、その幟を立て掛け獅子舞をする光景を神社で見ることができます。

 

西木熊野神社【善通寺市】 秋祭り[ 西木熊野神社(善通寺市)]

 

大木獅子組の祭りの準備では、道具と一緒に幟も準備できているか必ずチェックをしますので、幟は獅子と同じように大切な物の1つとなっています

僕が知る限りでは、幟文化は中讃地域、主に、多度津町、善通寺市、その周辺地域に限られた文化だと思われます。
幟は、祭りの進行を見ていると各地域によってその役目も違ってたりします。

例えば、丸亀市にある中津八幡神社の秋祭りでは、行列の時に獅子ではなく各獅子組の幟が神輿の後ろに付いて進んでいきます。

 

中津八幡神社【丸亀市】 秋祭り[ 中津八幡神社(丸亀市)]

葛原では、獅子と一緒に幟も持っていくので、幟だけが移動していくということはありません。
地域によって使われ方も違うのだと、その光景を目の当たりした時は驚きました

さらに同じ多度津町の春日神社の秋祭りでは、幟と一緒に別の物を見ることができます。

 

春日神社【仲多度郡多度津町山階】 秋祭り[ 春日神社(多度津町山階)]

吹流しです。

このブログでも度々出てくる水野さん曰く、
幟と一緒にある吹流しは、多度津町山階でしか見たことがないと
初めて見た時は驚いたそうです。

 

このように地域によって、独自の色を出している幟文化。
個人的には、祭りの派手さを演出してくれますので好きな文化でもあります

今後も、各地域のお祭りで見かけた時は、どのような使われ方をしているのか見ていきたいと思います