お祓いと獅子と神様

 

各地で、徐々に秋祭りが催されたと耳にするようになってきました。

来月に入れば、葛原の周辺地域でも鉦や太鼓の音色が聞こえてきますので
その頃には、葛原の秋祭りももうすぐなんだと実感していると思います

葛原の秋祭りでは、祭り1日目の宵祭りから始まります。
葛原4組の獅子組が、葛原正八幡神社の境内で1組ずつ舞っていきます。

ただ、獅子舞をする前に必ずすることがあります。

 

葛原正八幡神社 お祓い
葛原正八幡神社 お祓い

 

お祓いです。

太鼓打ちの頃に、聞かされていたお話しがあります。

お祓いを受けることで神様が宿り、初めて家を回ることができる。
太鼓打ちのあなた達も、神様が宿っているんやで。

と。

 

大木獅子組[ 家遣い ]
大木獅子組[ 家遣い ]

 

小さい頃のお話ですが、不思議とずっと覚えていて
お祓いを受けた獅子頭でないと、家を回ることができない。
というお話しを、上の方々からにもちょくちょく聞いたことがあります。

実際、お祓いを受けたあとお守りを受け取ります。
そのお守りを、獅子頭の頭に付けてから初めて境内で舞うことができます。

この獅子頭にお守りを付けるという風習は、香川県全域で見ると珍しい風習だそうです。

善通寺市の原田町にある春日神社の秋祭りでも、祭り1日目の獅子舞をする前に1組ずつお祓いを受けています。
春日神社では、お守りではなく御幣を付けるそうです。
そして三豊市にも、同じような風習のある地域があるそうです。

民俗学に携わっている水野一典さんのお話では、中讃地域では古風な形で祭りが行われている地域が比較的に多いとおっしゃられてました。
お祓いを受けて初めて獅子舞ができるというのも、その一つだそうです。

天気の悪い年は、太鼓打ちと獅子は濡れないようにとても気を使います。
移動する時も、鳴り物の道具以上に気を使います。

小さい頃は、獅子頭を触っただけでも怒られてました。
油単の付けた獅子を跨いで遊んでいても、とんでもなく怒られた記憶があります。

昔から続く風習が、自然と特別な物という意識へと結びついっていったのかもしれません。
今現役の僕達も、そのような意識を廃れさせないようにしないとと思います。

 

 

葛原正八幡神社での奉納は、獅子を替え2回舞う

 

久々に、葛原(かずわら)の秋祭りのお話です。

葛原正八幡神社の秋祭りは、10月第3週の金曜日の夜から始まり
日曜日の夕方まで行われます。

葛原正八幡神社 秋季大祭2015

 

葛原正八幡神社での奉納は、必ず2回舞います。

ただ同じ獅子を使って2回舞うことはしません。
1回目の獅子舞が終われば、別の獅子に替えて再び舞います。

これは葛原4組の獅子組全てに共通しています。

日曜日の行列の時でも、お旅所まで進む間に
数回獅子舞をするのですが、そこでも2回ずつ舞います。

お旅所でも2回、帰ってくるときも2回、最後も2回。
全て1回目の獅子舞が終われば、獅子を入れ替えます。

小さい頃から、それが当たり前となっていましたので
全然気にもしていなかったのですが、
沢山のお祭りの撮影に行くようになって
その文化が葛原独特の文化だと知ることができました。

香川県の獅子舞は、多くは1頭で舞うところが多く、
本番用に使っているのは1頭というところがほとんどです。

地域によっては、複数持っているところもあります。
ただそれは同時に舞うか、予備でというところもあったりと
位置づけ的には、葛原とはまた違うのかなと思われます。

撮影では、獅子頭を持って撮るスナップ写真を現地でお願いしているのですが
だいたいは、メインの獅子頭を1頭持って撮影にご協力を頂けています。
葛原も、数年前にスナップ写真を撮ったのですが、、、

多度津町葛原の獅子組
これを見た時は、なるほどと思いました(笑)

4組全てが、2頭を持って撮影

撮影をお願いする時も、どっちで?という質問もなく
普通に2頭を出してくれました。

葛原では、2頭で1セット。
その文化が現れたスナップ写真でした

なぜ2回舞うのか、、、

正直僕もわかりません。
でも、昔から続いている伝統ということは
何かしらの意味があるのだと思われます。

2回舞うことに意味があるのだとすると
それに合わして獅子を換えるというのも
何か納得できるような気がします。

地元でいるとなかなか気づかないこともありますが
他の地域の祭りを知ることで、地元の文化に気づけたことはよかったです。

今後も大切にしていかないとと、大変強く思いました

 

 

昔の獅子頭事情

善通寺市にある松下獅子店。

 

最近、お邪魔をしにいった時のこと。
おっちゃんから、県内の職人さんが掲載されている本を見せてくれたので見ていると
おっちゃんが若い頃の写真も掲載されていました。

 

松下獅子

 

写真には、面や、獅子頭が沢山並んでいました。
若い頃から、面や獅子頭の制作に携わっていたんだと関心しながら見ていたんですけど
よくよく見ると獅子頭が少し小さい!?

 

おっちゃんに、

「これ小さくない?」

と聞いたところ

 

今は、獅子頭の修理や新調など依頼は来ていますが
過去には、僕達が使っている獅子頭のサイズが売れなかった時代があったそうです。

 

職人として仕事をしている以上、売れなければ生活ができません。
小さなサイズの獅子頭などを制作してそれを販売したり、お土産屋に卸したりしてたそうです。

まさかそのような売れない時代があったなんて思ってもみなかったので驚きました。

 

偶然ですが、その話をしている時に当時の値段表も出てきました。

 

松下獅子店

 

サイズも、極大~小までと様々で値段だけ見ると数百円~数千円と安い

と思ったのですが、当時の値段ですので仮に現在も販売するとなると桁は違ってくるとのこと。

そりゃそうだ

値段表と一緒に写っている獅子頭は、小ではなくさらに小さい極小というサイズで販売してたそうです。

その極小サイズの獅子頭を制作していた当時のエピソードなど、色々と聞かせてくれたのですが
今では難しいことなんだろうなと思うような内容も出てきたり、とても面白い内容のお話でした(笑)

 

現在は、ダカの面や、獅子組で使う獅子頭の制作に追われている日々なので
今の現状しか知らない僕にとっては、そのような時代があったことに驚きました。

その時代時代で、制作現場の事情も変わっていったんだと
少し歴史に触れることができたような気がします

 

ちなみに、今はお土産屋さんに卸すような獅子頭とかは制作していません。

あればちょっと欲しかったんですけど、
時代が違うので仕方がないと諦めました(笑)